営業マンが転職で注意すべき競業避止義務と秘密保持契約
1. 競業避止義務とは?
競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ) とは、会社の利益を守るために、従業員や元従業員が会社と競争関係にある企業で働いたり、競合する事業を行ったりすることを禁止する義務 です。
特に 営業職は、顧客リストや営業ノウハウを知っているため、競業避止義務の対象になりやすい職種 です。
競業避止義務が発生するケース
競業避止義務が発生するのは、主に次の3つのケース です。
① 雇用契約や就業規則に記載がある場合
雇用契約書や就業規則に**「退職後〇年間は同業他社での勤務を禁止する」** といった規定がある場合、競業避止義務が発生します。
② 秘密保持契約(NDA)にサインしている場合
営業職の場合、退職時に「競業避止義務」に関する書類にサインを求められることがあります。これに同意してしまうと、転職先の選択肢が狭まる可能性があります。
③ 役職者や特定の専門職である場合
企業の機密情報や経営戦略に深く関与していた場合、たとえ契約書がなくても、「信義則(誠実に行動すべき義務)」 に基づいて競業行為が制限されることがあります。
競業避止義務の期間や範囲
競業避止義務は無制限に適用されるわけではありません。
一般的には、
✅ 期間:6か月〜2年程度(長すぎると無効になる可能性がある)
✅ 地域:会社の営業エリアに限定される
✅ 業種:直接競合する業種・職種に限定される
もし、過度に広範囲な競業避止義務が課されている場合は、法的に無効となる可能性もあります。
① 雇用契約や就業規則に記載がある場合
雇用契約書や就業規則に**「退職後〇年間は同業他社での勤務を禁止する」** といった規定がある場合、競業避止義務が発生します。
2. 秘密保持契約(NDA)とは何か?
企業に勤務する際、多くの従業員は雇用契約の一環として**秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)**に署名します。これは、企業の機密情報が外部に流出するのを防ぐためのもので、特に営業職や開発職など、会社の競争力に関わる情報を扱う従業員には厳しく適用されることが多いです。秘密保持契約の範囲は企業ごとに異なりますが、一般的に「企業の営業戦略」「顧客情報」「価格設定」「技術開発」「マーケティング手法」などが含まれます。一度署名した場合、退職後も契約の効力が継続し、違反すると訴訟や損害賠償請求を受ける可能性があるため、退職時にはどの情報が持ち出し可能か慎重に見極める必要があります。
営業マンが注意すべきポイント
① 退職前に雇用契約をチェックする
✅ 「競業避止義務」の条項があるか?
✅ 「退職後◯年間は競業禁止」の記載があるか?
✅ どの業種・地域が制限対象になっているか?
何もサインしていなければ、競業避止義務がない可能性が高い ですが、退職時に新たな誓約書を求められることもあるため、慎重に確認しましょう。
② 同業他社に転職する場合のリスクを考える
✅ 前職と全く同じ業務を担当しないようにする
✅ 前職の顧客リストや営業ノウハウを利用しない
✅ 転職先と前職の会社が競争関係にあるかを確認する
「以前の経験を活かしたい」と思うのは当然ですが、競業避止義務に違反すると訴訟リスクがあります。
③ 転職時に前職の情報を持ち出さない
✅ 顧客リストや営業資料をコピー・持ち出ししない
✅ 前職の営業戦略や価格情報を転職先で話さない
✅ 前職の商談情報を使って転職先の営業活動を行わない
「口頭で覚えている情報だから問題ない」と思いがちですが、営業ノウハウや顧客情報は「営業秘密」に該当することもあるため注意が必要 です。
④ 競業避止義務を回避する方法
もし、競業避止義務のために希望する転職先に行けない場合、次の方法を検討しましょう。
✅ 制限期間が過ぎるまで待つ(半年~1年程度)
✅ 業務内容を変えて転職する(営業→マーケティングなど)
✅ 前職の競合ではなく関連業界に転職する(例:食品メーカー営業 → 食品商社営業)
✅ 会社と交渉し、競業避止義務の解除を求める
特に、「競業避止義務を守る代わりに一定の補償をする」という契約になっている場合は、補償が支払われているかを確認する ことも重要です。
競業避止義務に違反したらどうなる?
競業避止義務に違反すると、以下のようなリスクがあります。
🚨 損害賠償請求をされる
→ 企業が「自社の売上が減少した」と主張し、損害賠償を請求してくる可能性があります。
🚨 裁判で転職が禁止されることも
→ 企業側が訴えを起こし、転職先での業務を停止せざるを得なくなるケースもあります。
🚨 社会的信用を失う
→ 転職先の企業にも迷惑がかかり、場合によっては「入社取り消し」になる可能性もあります。
競業避止義務や秘密保持契約を弁護士はどう対応するか
1. 競業避止義務の契約内容を精査する
弁護士はまず、雇用契約や秘密保持契約の内容を確認し、「競業避止義務の適用範囲が過度に広すぎないか」「法的に有効かどうか」を精査します。特に、制限期間が長すぎる(一般的には2年以上は無効の可能性が高い)、競業の範囲が広すぎる(業界全体を禁止するなど) 場合は、無効を主張できる可能性があります。
2. 競業避止義務が適用されるかを判断する
弁護士は「本当に競業避止義務が適用されるのか」を分析します。例えば、「退職後も競業避止義務を課すなら、会社は補償金を支払うべき」といった法的観点からの主張ができることもあります。もし、契約に補償規定がない場合、競業避止義務が無効と判断されることもあります。
3. 企業と交渉して制限を緩和する
弁護士が代理人となり、会社側と交渉を行うこともあります。例えば、「特定の業務だけ競業禁止にする」「期間を短縮する」「補償金を受け取る代わりに義務を守る」 などの交渉が考えられます。特に、転職先で前職の機密情報を使用しないことを誓約することで、競業避止義務の制限を緩和できる場合があります。
4. 訴訟リスクを判断し、対策を立てる
会社側が競業避止義務違反で訴える可能性がある場合、弁護士は「本当に裁判で争う価値があるか」「会社側がどのような証拠を持っているか」などを判断し、リスクを評価します。多くの場合、企業は訴訟のコストを考えて強硬な手段を取らないことが多いため、交渉で解決を図るケースが一般的 です。
5. 実質的に競業を回避する方法を提案する
もし競業避止義務が厳格に適用される場合、弁護士は「競業と見なされない業務範囲で働く」「コンサルタントとして個別契約で活動する」「一定期間フリーランスで別の仕事をする」などの回避策を提案することがあります。
6. まとめ
営業マンが競業避止義務について注意すべきポイントをまとめると…
✅ 雇用契約や秘密保持契約を確認する
✅ 転職先が前職の競合に該当しないか確認する
✅ 顧客リストや営業ノウハウを転職先で使用しない
✅ 業務内容を変えて転職するのも一つの手
✅ 競業避止義務が過度に厳しすぎる場合は法的に無効の可能性もある
競業避止義務を守りながら、スムーズにキャリアアップするために、慎重に行動することが重要です!